マイクロフォンの話


 
 マイクロフォンって、何より大切なんだ!と気付いたのは中学3年生(1971年)の時だった。 
 当時私が中学の吹奏楽部の中の同級生5人でやっていたブラスアンサンブルバンド、その名も「ザ・ゲテモノ・ブラス」でラジオ出演した記念の放送局からもらったレコードで思い知らされた。ちなみにその「ザ・ゲテモノ・ブラス」は当然、ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスのファンだったというのは、書く必要もないが、レパートリーは、ペレスプラード楽団やグレンミラーものが多かった。 
 話は逸れてしまったが、要するに放送局で収録に使うマイクと、当時(まだカセットテープは一般的でなかった)のテープレコーダーのおまけに付いてくるマイクの、音質の違いを知ってしまった。 
 ・・・・・・全然違う!・・・・当たり前だけど。
 
 
エレクトレット〜コンデンサマイク
 そんな、マイクでの音の違いを知ってしまった私が、最初に買ったのがこのソニーのエレクトレットコンデンサマイクのECM−2270というステレオペアマイクだった。 
 これを選んだきっかけは、その時私のアニキが友達から借りていた、ほとんど最初の業務用でないエレクトレットマイクであるソニーのECM−21の音を聴いてしまったからだった。 
 もちろんその時すでに、かの名器「ECM−23」は誕生していたわけだが、1本で、23,000円のマイクを高校生が買えるはずもない。 
 当たり前だ! 
 ちなみにこの270マイクは、キャノンではないが、おそらく一番安かった「平衡出力」のマイクだった。
 

 でもって、2本セットで、ステレオバーが付いてくるソニーの「ECM−2270」という型番のステレオペアーマイクを買った。 
 その当時、まじめな録音というとオープンリールのステレオデッキがソニー、ティアック、アカイなどから発売されていて、友達仲間でも「長男」または「一人っ子」だと親に買ってもらって自分の部屋にあるというすごい環境のヤツもいた。 
 私の様に「末っ子」はそういう恩恵はあるはずもなく、そこで気付いたのは、「デッキを持ってるヤツはいる、でもまともなマイクは誰も持ってない」ということで、テープデッキは誰かに借りればそれでOKと、私はマイクを買った。 
 ペアーマイクを買ったのは大正解で、マイクを貸すを条件にデッキを借りることが結構うまくいった。 
 もちろん今と違って町の電気屋にマイクなぞ置いているはずもない。確かどこかにたのんで取り寄せで、購入した。 

 ちなみに、私が最初に買ったオーディオ製品はこのマイクであり、2番目に買ったそれは「ビクターのSEA−10」である。 
 これを読んで、ウァオーと思った人がいるなら、きっと同じ様な青春時代を過ごしたに違いないと想像する。 
 ステレオもテープデッキも何にも持っていない、少年が買ったものとするには余りにも変な組み合わせだったが、これが正解だった。これらと借り物のテープデッキで、私の録音人生が始まった。 
 

 その後、あるマイクを購入したことはあったが、結局それはステレオ雑誌の「売ります買います」コーナーを利用して売ってしまった。今では1万円以下で買える世界の名器「シュアーのSM−58」が約3万円だった時代のことである。

 



 二十歳を過ぎても、そのマイクの憧れは、留まるところを知らずで、ある日のステレオ関係の雑誌の広告にあった一言に心を揺り動かされてしまった。 

 それは、 
「名器C−38Bと並ぶバックエレクトレットコンデンサマイク新発売」というソニーの広告だった。 

 最後はC−38Bしかない、と心に決めていたのに、それと並ぶマイクが何と38Bの半値で発売されるとなると、居ても立ってもいられない。 

 すぐに、大阪心斎橋の「ソニータワー」に電話して、その新型マイクと超名器「C−38B」とツートラサンパチデッキを試聴室に用意してもらって、右手にギター、左手にトランペット、背中のリュックには、入るだけの打楽器を詰め込んで、電車に乗って、大阪に向かった。 
 きっと、すごく変な光景だったと思う。 

 現場に到着し、左チャンネルに「C−38B」を右チャンネルにその「新型器」をつなぎ、タワーの係の人に録音してもらった。楽器を順番に演奏していき、そしてそれを左右のチャンネルを切り替えながら、モノラルで、当時最高級のソニーのスピーカーで再生音を聴かせてもらった。 
 もちろん、その「新型器」を買えるだけのお金は用意していた。そいつが良かったらすぐ買うから、と、この実験をさせていただいた。

 で、メチャメチャ驚いた! 
 その新型マイクでの音は、C−38Bと比較にはならなかった。全然違う! 
 C−38Bの太い、暖かい、それでいて繊細な音は、その新型マイクには全く無かった。 
 ここでまた、「すごいものはすごい」と打ちのめされてしまった。 
 金を貯めて「C−38B」を買うしかない。タワーの係の人も、私がそう言うと「その通りです」と言った。 

 でもって、何年かしてから、「C−38B」を買った。もちろん今でも使っている。ちなみにこれは人には貸せない。未だに家から外に出したことはほとんど無い。日本が世界に誇れるマイクだ。


 このマイクは、録音用に買ったのではない。当時生ギター用には気に入ったマイクがなかったので、なるべく小さなマイクを買ってギターの中に入れて使う目的で購入した。 
 ましな音を求めてエレクトレット型を考えたが、SNが悪いのでステレオの出力をモノラルにして使うことにし、かつギターの中入れるのが目的なので低音はダダ下がりが良いのでこれになった。 
 しかし結局余りその目的では使わなかった。
 
 
オーディオテクニカ AT822
 ギターのステレオ録音やライブの記録用に使っている。
 もう少し小さかったら便利なのに、と贅沢なことを考えることもあったが今も使っている。
 ステレオのヘッドなので、オンマイクぎみではマイクポジションには悩むこともあるが、まずます気に入っている。 
 
 
 

ダイナミックマイク
 
 

 でもって、ダイナミックマイクはというと、当時国産は輸入ものと比較にならなかった。いくつか買っては売り、結局残ったのは「シュアーSM−57」と「ゼンハイザー441」だった。
ゼンハイザー441
シュアーSM57

 久々に買ったのは、「シュアーBeta57A」を2本。 
 ちょっとくたびれてきた感のある「SM−57」の後継として、主に打楽器と歌用に購入した。 
 随分悩んだが、このマイクだとへたなエレクトレットマイクより、良い音だし、SNが良いので、ペアーマイクとしても使いたくなるだろうと考えて2本購入した。 
 こんな業務用の立派なマイクが2本で2万円台で買えてしまう。 

 このマイクは使い易い。ゼンハイザーの441とは大違いで、頭を使わずに録るにはこれが一番便利である。

ふと気づいてみると、コンデンサ系は国産で、ダイナミックは輸入品になっていた。

 実は、現在所有の製品群に辿り着く前に、某国産のダイナミックマイクは使っていたが、かなり良くなかったので、1年くらいで手放してしまった、という苦い経験があったからである。

 まだ、輸入もののコンデンサは、使っていないが、さてこれからどうなりますやら。

 たぶん、もう既に自分自身の楽器演奏や歌では、これら以上の製品を使う必要は無いような気がしている。
 マイクを換えるより、演奏や録音技術をもうちょっと改善する方が、大事だろうと思っている。

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