マルチレコーダーの話

 
 マルチレコーダー(マルチトラックレコーダー)なるものが、あると知ったのは、1972年以降のことだったか。

 ちなみに、マルチレコーダーとは、音楽録音用のものに限定して言うと、1チャンネルがモノラル、2チャンネルがステレオ、3チャンネ ルは特殊なものでステレオ+タイムコードトラックなどの付いたもの、4チャンネル以上のものを総称してマルチレコーダーと言う。
 当時は4チャンネルステレオがはやった時代で、音楽録音ではなくて、ディスクリート4チャンネル再生のために4チャンネルオープンテープデッキがいくつ か発売されていた。
 おそらく、その先駆者はティアックのA-3340Sかもしれないが、その次にソニーのTC-7850が発売された。他には今は無きアカイが業務用と輸出 用でいくつか発売していたし、オタリからも業務用が発売されていたが、アカイやオタリの製品は、全くの業務用で、私はカタログ以外では見たことがなかっ た。

 デジタル式も含めて、現在のマルチレコーダーの原型とも言えるティアックの144(マイクミキサー付きカセット式4チャンネルレコー ダー)が発売される前は、ティアックのA-3340SかソニーのTC-7850が、アマチュアの手の届くマルチレコーダーの代表選手だった。
 
 
ソニーTC-7850購入まで


 マルチレコーダーを購入するまでの作品作りは、テープレコー ダーを2台並べて、順番に楽器を録音していくという形でやっていました。

 いろんな楽器の音が入ってオーケストレーションが豪華になるにつれて、テープノイズが増えていって、自分の気に入ったア レンジが出来る頃には、最初に録った音はボロボロになっている、という録音でした。

 もちろん、良いマイクもありませんから、悲惨なものです。

 でもそんな自分の音楽に感動していた事もありました。(自分の音楽は自分自身を感動させるためだけにあるようなもので、 人が何と言おうと自分にとって良いものは良いものなのですから)

 

 
ソニー TC-7850を購入


この写真は「唄うおでん屋 茶文のページ」から転載させていただきました。
http://www.wup.jp/%7Echabun/   ありがとうございました。
 どうしてソニーだったか?はもう忘れてしまった。
 そんな高価なものだったのに、選択基準を忘れてしまっている。
 ただきっととても悩んだにちがいない。

 今覚えているのは、
クローズドループデュアルキャプスタン式だったこと。ヘッドのメンテナンスがし易そうだったこと。
S/N比が少し良かったから。
メーターが見やすかったこと。
ソニーブランドへの憧れ?

 使いこなせる様になるまでに1年くらいを要した。

 VUメーターだったから、ピークレベルは自分自身で音を聴いて、判断するしかないので、最初の頃はすべてレベルオーバー だった。

 打楽器の音がUVのー20dB程度で、既に+20dBを越えて歪んでいるのだということに少しの間気づいていなかった。

 UVだけでは、良い録音ができずに、ティアックのピークメーターを中古で購入した。

 この器械で何曲創ったかは覚えていないが、これのおかげで、作品を出して、某コンテストで、優勝したり、入選したり、と 世の中に作品を出すきっかけを作ってくれた感謝すべきテープデッキである。 
 

 しかし、ひとつの作品を作るには、10種類以上の楽器を重ねることになるので、やはりコピーを繰り返さなくてはならず、「アドレス」 や「dbx type2」などのノイズリダクションも追加して、ヒスノイズとの戦いが始まるのだが、ノイズと多重録音の録音順など、音楽以外のために頭を 使いすぎて、良い曲ができなくなってきた。

 そんな折りに、フォステクスからマルチトラックレコーダーが発売されるようになってきた。フォステクスというと「フォスター電 機」・・・私のお気に入りのスピーカーユニットのメーカーである。
 同社から最初に世界初の1/4インチ8トラックレコーダーが発売されて、唖然としていた。
 その頃すでにティアックから1/2インチ8トラックのものは製品化されていたが、1/2インチテープは、コストが単純に2倍していた上に、あまり手軽に 使えるというものではない。またノイズリダクションは別に購入しなければならないし、純正では「dbx」だったので(dbxは余り好みではなかった)。

 フォステクスの製品は、ドルビーCが内蔵されていて、私にとっては、レベルメーターがVU表示であることを除けば、ほぼ満点と思いな がら、少し経って、そのすべてをクリアした製品が登場した。
 それが、次に買った「model 80」である。


フォステクス model80 を購入


 夢の8トラック録音が自宅で可能となった。
 24トラックのデジタル録音器が、安価で買える今から考えると、とても高い買い物だったが、CDもまだ世の中に出ていなかった当時、こんなものが買える とは、すごいことだった。

 ヘッドがすり減るまで使っていた。

 そろそろ、「ヘッド交換して調整しよう」と考えていた矢先の出来事阪神淡路大震災で ある。

 床まで墜落はしなかったものの、前に倒れてしまった。

 で、修理・調整の見積もりを尋ねると結構な値段だった。
 それと、どんどんオープンテープの購入が難しくなってきた。15分の録音でテープ1本が1,500円。
 加えてエスカレートしてきた録音はもう8チャンネルでは足りなくなってきた。

 で、ついにmodel80の使用継続を諦める日が来る。
 

 コンピュータを使ったハードディスク録音には、何の興味もなかった。というよりパソコンは安定した道具ではないし、そこでまた、当時 登場していた2つの方式のデジタルマルチレコーダーを比較することになった。

 1つはティアックの出した「8ミリビデオテープ」を使うもの、もうひとつはアレシスの「S-VHSテープ」を使うadatだった。  adatは、その互換機がフォステクスからも発売されていて、それを購入した。
 どうしてadat方式を選んだか、というとテープの安定性のことで、8ミリビデオテープよりVHSテープの方が単純な話安定走行するし、どこでも購入で きるメリットがあったためである。これから先を考えても、8ミリビデオカメラが「DVビデオカメラ」に変わって、テープの購入が難しくなるが、VHSテー プ規格は、まだ何年かは続くだろうと思っている。
 ところで、話は戻って、
 残念だったのは、フォステクスの購入品に少しの不都合があり、すぐに返品したところ、その販売店より「アレシスのadat-Xt」に変更して欲しいとの 話があり、結局これを購入した。


 
ALESIS adat-Xtを購入

 このデジタルマルチレコーダーは、大変良くできていて、AD変 換やDA変換でのノイズは気にならない。

 1台目は、発売当初で、まあまあ安く買えたが、余りにも気に入ったのと、ケーブル1本で、どんどんチャンネルを増やすこ とが出来るので、2台目を中古で見つけて購入することにした。

 かくして、16チャンネルデジタル録音が自宅でできる、という想像を絶する環境を手に入れてしまった。

 これが、その2台のadat-Xtであるが、唯一の難点が、メカニカルノイズである。

 そのために、この2台を入れて透明のプラ板で、蓋をすることにした。
 今のところ、これで充分である。

 マイクとの距離が約1mなのでメカニカルノイズをマイクがひらうのであるが、かつてのヒスノイズとの戦いに比べれば、全 くたいした問題ではない。
 

 
ALESIS adat-HD24を購入


ALESIS adat-Xtを購入




 

ALESIS adat HD24を買ってしまった!



   adat-Xtの2台を使っての多重録音で充分だと思っていた のだが、ある時adatの輸入販売元から連絡があって、「adat-Xtの修理を終了する・・・」みたいな内容だった。

 これは困った・・・マルチ音源をテープに貯めてあったのだが、2台のadat-Xtが完全同期してはじめて、16chの録音ができるので、この修理が出 来ないとなると、とても困る。

 ALASIS社は、adatのテープ式をやめて、ハードディスクレコーダーでいく方針になった様で、でもってadatHD24とい う製品が、約50万円の定価で発売された。・・・これは高くて買えない!
 ところが、テープ式adatのユーザーには、低価格で購入か交換という連絡があって、また悩んでしまった。

 テープ式adatを最初に購入したときも、いろいろ悩んだ末だったのに、同様のマルチレコーダーは他社からも発売されているし、また悩まなければならな いところだったが、アナログ録音機からデジタルに変わって、何が一番困ったかというと、アナログ→デジタル変換とデジタル→アナログ変換でのノイズの発生 であった。

 その点今まで使ってきたALESIS社の変換回路は実に良くできていて、心配しながら録音することは一度も無かったのだから、ここでは浮気せずに、また ALESISを選ぶことにした。

 また、なにより今まで貯めていたテープのadatの音を光ケーブル2本でそのまんまコピーできるし、もっと良いのは他の機種では、一度に1台のハード ディスクしか本体に入らないが、これは2台同時に入れて、相互コピーが可能という点で、ハードディスクという、若干不安材料のある媒体を用いるのだから、 コピーして保存できるのは尚結構と、なんと余り悩まずに買ってしまった。

 若干の不安材料は、テープ式では、メカニカルノイズが気になっていて、しかも2台同時に動かしていると、結構なメカ音であるが、 ハードディスクもどの程度のノイズかが不明だし、普通のスタジオの様にマイクと機材との距離は離れていなくて、わずかに1mしかないので、とは思っていた だ、実際に使ってみると、テープ式2台よりハードディスク式の方が、少しメカノイズ(ファンノイズ)は少なくて、まぁ実用範囲だった。

 さらに、テープ式の時のように、早送り、巻き戻しでテープがメカに噛み込む心配もないし、精神衛生上よかった。
 その他の周辺機器はすべて換えることなく、ハードディスクマルチ録音になってしまった。

 もう、買わないぞ!と誓って、現システムを使うことになった。
 「人は私のことを、楽器や機材に多額の金を使って・・・変なヤツだ」と言うが、これでも今までのすべてを合計しても、国産高級車1台よりは、遙かに少額 なわけで、まぁこんなもんだろう。

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